渡部信子先生コラム
No.14 2011年09月
【No.14】妊娠中におすすめの起き上がり方
仰向きで寝ている妊婦さんが超音波検査の後などに、そのまま「ガバッ」と起き上がると、「ダメよっ! そんな起き方をしては!」「横向きになって手をついて、そっと起き上がらないと!」との声が飛んできますね。
そう指導するのが日本の助産師の間では「常識」になっているからです。
でも私は長年、これはいろんな意味で良くないと思っていました。
その理由は
・腹筋が弱り、ひどい腹直筋離開になりがち
・仙骨(尾てい骨盤の上にある骨)がどんどん飛び出てくる
・脊骨の柔軟性がなくなり、腕・肩・背中が痛む
・胸板が厚くならず、子宮は上に上がれず、赤ちゃんが下がりがち
・起き上がる時に肩・肘・手首が痛み、起き上がるのがつらい人がいる
・左右どちらか一方ばかりで起き上がっていると、全身がゆがみやすい
・腰痛重症者になりがち
などなどです。
「ガバッ」と起き上がるのは、もちろんお勧めできません。
では、どう起き上がればいいのでしょう?
私は3ヶ月ほど前から、妊婦だけでなく全ての人に「だるまさん起き」を指導しています。
・腹筋が弱らない、ひどい腹直筋離開になりにくい
・妊娠中は飛び出がちな仙骨がもとに納まる
・脊骨の柔軟性が良くなり、腕が丈夫になり、赤ちゃんを抱きやすい身体が作られる
・肩・腕・背中の痛みも治まりやすい
・胸板が厚くなり、子宮は上に上がり、赤ちゃんが下がりにくい
・起き上がる時に肩・肘・手首が痛まず、気持ち良く起きられる
・全身のゆがみが改善しやすい
・腰痛重症者になりにくい
私は長年漠然と、この「だるまさん起きが良いのでは?」と思っていたのですが、セミナーの時にこの起き上がり方を提案したところアメリカ人の女性がたくさんお産する病院で勤務している助産師が、「アメリカ人妊婦は、みんなこの起き方をする。日本人のように、横向きになってからだと起き上がれない。
上半身が大きいせいか、肩が痛いと言う」と言うのでやはり「だるまさん起きは正しい」との確信。
お腹がはっている時に無理に起きるのはもちろんダメ。
お腹がはっていないことを確認してからやりましょう。
腹筋と腕力とで無理に起き上がろうと、もがかないでね。
ポイントは
1.尾骨を天井方向に上げること
2.上げている方の脚を床方向に振り下げること
妊娠初期や中期から続けていれば、臨月になっても楽々起きられます。
お腹がはっていない時に、この起き方で起きたからといって、お腹がはった人に、私はまだ一度も出会ったことがありません。
片方の膝裏で手を組んで起き上がるのですが、左右ともやってみて、最初は起き上がりやすい方で起きるようにしましょう。
お腹が張らないことが分かったら、起きやすい方で5回「だるまさん起き」をして、その後、起きにくい方で5回しましょう。
ひどい腹直筋離開で、産後にお腹がたるんだり腹筋運動が一回もできなくなるなんて、情けないことにならないよう毎回「だるまさん起き」をして、きちんと腹巻きをして、腹巻の上からトコちゃんベルトと妊婦帯を着けましょう。
それから、絶対にトコちゃんベルトより高い位置にはパンツ・ズボン類のゴム跡が付くような着用の仕方をしないでくださいね。
(初出 2011年9月)
- 2025.04.22
- 14:29
- 渡部信子先生コラム